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昭和のスーパースター 力道山
臨終の際に微かに動いた〝三本の指〟で何を伝えようとしたのか⁉️
基佐江里 定価 本体1600円(税込)

力道山が39歳で生涯を閉じた赤坂・山王病院601号室のベッド(画・基 蕗子):文藝春秋刊『Number 70』所収「追跡!力道山」P18〜19の写真(フリーカメラマン土屋明氏撮影)を模写したものです。

 上の画をご覧いただきたい。このベッドの上で力道山は、臨終(いまわ)の際に親指と小指を短く折り「三本の指」で何かを言い遺そうとした。この三本の指で何を言いたかったのか? ある人は「やり残した夢が三つあったんじゃないか」と言い、力道山とタッグを組んでいた豊登は「芳の里や吉村道明と三人で力を合わせ、プロレスの火を決して絶やすなと告げようとしたのだ」と説いた。また、敬子夫人は「千栄子と義浩、光雄の三人の子供を頼む」ということかと思い、「二つに分断された祖国の北朝鮮と韓国、そして日本の三国の友好を願ったのではないか」とも推測してみたという。
 力道山の「三本の指」に秘められた謎—著者・基が、新刊「昭和のスーパースター 力道山」で、その謎を読み解く。


(本文より)はじめに
 力道山——。日本のプロレスの礎を築いた最大の功労者であり、敗戦によって打ちひしがれた日本人に勇気と希望を与えたプロレスラーである。戦後日本の高度成長期にあって「総理大臣の名前は知らなくても、力道山の名前を知らない者はいない」とまで言われた、昭和のスーパースターだ。
 令和六(二〇二四)年十一月十四日は、力道山の生誕一〇〇周年であった。それを記念して一足早い十一月九日、東京・千代田区の帝国ホテルにおいて「力道山生誕一〇〇周年記念パーティー」が開催された。主催したのは田中敬子さんであった。昭和三十八(一九六三)年十二月十五日、三九歳で凶刃に倒れた力道山を看取った敬子夫人である。結婚して半年後に未亡人になった。
 敬子夫人は薄紫色の和服姿で登壇し、祝賀会に駆けつけた四〇〇名近い人々に感謝の言葉を述べた。京絞りの和服は「力道山にプレゼントしてもらった」ものだという。主賓として王貞治氏や張本勲氏、徳光和夫氏が祝辞を述べた。祝辞は三者ともに「力道山の功績」を讃えるものであった。
 力道山は、大相撲の世界で関脇の地位まで上り詰めながら自らマゲを切って力士を廃業した。建設会社勤務を経て、銀座のクラブで出会った日系レスラー・ハロルド坂田の誘いを受けてプロレスラーとしての一歩を踏み出す。アメリカ遠征の修行を経て帰国。リング上で空手チョップという伝家の宝刀で外人レスラーを薙ぎ倒す自国のヒーローに日本人は熱狂した。テレビというパートナーを得てプロレスは大衆のものとなり、力道山のプロレスによってテレビもまた飛躍的に普及していったのだった。
 力道山についての書籍は、力道山夫人・田中敬子さんが著した『夫・力道山の慟哭』や、力道山の子息(次男)百田光雄氏が書いた『父・力道山』はじめ、秘書の吉村義雄氏、プロレス関係者、ジャーナリスト、作家、評論家ほか数十冊にのぼる。斯界にあっての力道山の戦績あるいは功績、人となりについてはほとんど書き尽くされているといってよい。にもかかわらずなぜ私は、力道山がこの世を去ってから六一年も経って会場となった帝国ホテル「孔雀」の間には400名近い人々が祝いに駆けつけたいる今、力道山について書こうと思ったのか? 理由は、ただ一つである。力道山は……息絶えるその寸前、右手を微かに動かし何かを伝えようとした。薄れゆく意識の中で、「三本の指」で何かを言い遺そうとしたという。この三本の指で何を伝えたかったのか?
 長い間「謎」と言われてきたこの〝三本の指〟が意味するものは何であったのかについて、筆者なりに思うところを書き留めておきたかったというのが本書発刊の目的である。

—本書の主な内容—

序章  力道山が遺した功績—「謝恩の碑」に刻まれた不滅の偉業

第1章 日米初の〝宇宙中継(衛星中継)〟で伝えられた
    「ケネディ大統領暗殺」の訃報

第2章 大統領暗殺五日後に見た悪夢—赤坂のナイトクラブ
    『ニュー・ラテンクォーター』の悲劇

第3章 傷跡は二センチほどで、小腸まで突き抜けていた

第4章 再手術——ストレッチャーで運ばれながら敬子夫人に
    「俺は死にたくない」

第5章 諸種の手当の甲斐もなく午後九時五十分、不幸な転帰となる
    —敬子夫人は二二歳で未亡人に

第6章 力道山年譜—出生、角界入り、自らマゲを切り廃業

第7章 プロレスに転向—単身アメリカへ渡り凱旋帰国

第8章 シャープ兄弟を迎え、日本で初めてのプロレス国際試合

第9章 力道山対木村政彦—昭和巌流島の決戦

第10章 対キング・コング、ルー・テーズ戦から
     フレッド・ブラッシー、ザ・デストロイヤー戦まで

第11章 力道山が見せた涙—敬子夫人が語る「素顔の力道山」

第12章 マスメディアに見る力道山の真実(パート1)

第13章 マスメディアに見る力道山の真実(パート2)

第14章 力道山のタッグ・パートナー、遠藤幸吉氏に聞いた
     「日本プロレスの原点」

第15章 『ニュー・ラテンクォーター』のオーナー山本信太郎氏に聞く
     「力道山〝刺傷事件〟」の真実

終章  吉村義雄氏が聞き取った「最期の言葉」
    力道山は〝三本の指〟で何を伝えたかったのか?


著者略歴
基 佐江里(もとい さえさと)
1946年1月、満蒙開拓移民の子として中国遼寧省に生まれ、鹿児島県与論島で育つ。1961年3月与論中学を卒業後、集団就職で上京。神奈川工業高等学校定時制電気科を経て日本大学文理学部哲学科に学び、同大学大学院文学研究科哲学専攻修士課程修了。転職を重ねたのち編集者生活を経てフリーに。著書に、台湾元日本兵の補償問題をテーマにした『聞け! 血涙の叫び 旧台湾出身日本兵秘録』、『日本格闘家列伝 栄光への軌跡』、『大山倍達 永遠の魂』、『大山倍達外伝』、『高度経済成長を底辺で支えた〈金の卵〉中卒「集団就職者」それぞれの春夏秋冬』などがある。がん患者向けの医療情報誌『月刊がん もっといい日』『がんを治す完全ガイド』編集長などを経て2009年4月、株式会社蕗書房を設立。季刊『ライフライン21 がんの先進医療』を創刊、現在に至る。

発行 蕗書房 発売 星雲社

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臨終の際に微かに動いた〝三本の指〟で何を伝えようとしたのか⁉️

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