福井県立病院 陽子線がん治療センター

軟部組織の描出ができるCT撮影を利用した自動位置決め照射システムを導入
総合病院としての機能を最大限に活かし、良質で安全な医療を提供


取材協力・写真提供● 福井県立病院陽子線がん治療センター
取材・文●編集部

 福井県福井市四ツ井2丁目にある福井県立病院。961の病床を持つ県内屈指の総合病院である。2000年4月に、県のがん診療連携拠点病院に指定された。


福井県立病院

 福井県立病院は多くの政策医療と高度医療を担っており、高度医療としては「がん治療」に対し力を注いでいる。
 「政策医療」とは、国民の健康を守るために国をあげて取り組まねばならない疾病のことであり、がん、循環器病、精神疾患、腎疾患、エイズなど19の医療分野が厚生労働省によって定められている。
 「がん撲滅」の使命を担い、陽子線がん治療センターが設立されたのは2011年3月初旬であった。センター長を務めているのは山本和高医師である。


山本和高センター長


陽子線がん治療センターの待ち合いラウンジ

「がん対策」を急務の課題とし、がん予防・治療日本一を目指す

 福井県は、全国でもトップクラスの健康長寿県である。しかし同県にあっても例に漏れず、1980年以来、がんが死因の第1位を占めるようになった。がんによる死亡者数が年々増加傾向にあることから、西川一誠県知事の旗振りで「がん対策」を急務の課題とし、「がん予防・治療日本一」を目指し各種事業の一環として、陽子線がん治療センターが設立されることになった。「がん撲滅」という大任を県から任されることになったわけだが、同施設に赴任した経緯について山本和高センター長はこう語っている。
 「ご存知のように福井県は原子力発電所が多い県です。この原子力の地盤というメリットを活かして何かできないかということで若狭湾エネルギー研究センターという施設ができ、そこに設置された加速器の研究利用の1つとして陽子線によるがん治療の臨床研究が開始されました。2002年に主に前立腺がんの患者さんを対象に治療を始めたわけですが、その経過は良好であるという結果が出たのです」
 しかし、どんなに結果が良くても研究施設では「治療できる患者さんの数も対象(がんの種類)にも限りがある」。そこで、「患者さんのためにも、これはもっと広げましょうということでこの陽子線治療施設ができたわけです」と、山本センター長。


これまでの治療状況(2014年3月31日現在)

 JR福井駅から車で約5分、バスで約10分のところに同施設はある。県立病院の敷地内に建っており、延床面積は5900㎡。地下1階・地上3階(一部4階)建てで、地下ではがん病巣の深さや大きさに合わせて陽子線の照射ビームを整形するための「ボーラス」や「コリメータ」が作製される。1階では治療と診察が、2階では画像診断と治療計画が立てられ、3階では共同研究や研修などを行っているという。


シンクロトロン加速器。
陽子を一定の円軌道上で周回転させて光速の約60%まで加速する装置
(写真提供:福井県立病院 陽子線がん治療センター。以下同)




回転ガントリー照射室。任意の方向から陽子線を照射する

 山本センター長を筆頭に、医師が4名。ほかに医学物理士が3人、診療放射線技師が9人、看護師3人、事務職員3人というスタッフで運営されている。
 同施設では、県民に対して、陽子線治療を受ける際の優遇制度が設けられている。治療費の助成と、敦賀市など嶺南地域に住んでいる患者への通院交通費の助成、治療資金を借り入れた患者への「利子補給」といった制度である。



治療装置イメージ(福井県立病院陽子線がん治療センターのパンフレットより)

照射室に、福井県立病院陽子線がん治療センターの特長である「積層原体照射システム」、
「CT自動位置決めシステム」が設置されている



CT自動位置決めシステム

陽子線がん治療センターでは、軟部組織の描出ができるCT撮影を利用した自動位置決めを導入することで、3次元的な情報も取り入れた高精度な治療が行えるようになった。CTの画像に合わせ陽子線を照射する位置を、ミリ単位で調整できるようになった(写真提供:陽子線がん治療センター)




2014年3月15日に、「積層原体照射システム」(上)と
「CT自動位置決めシステム」(下)を備えた新しい治療室を報道陣に公開した(編集部撮影)


 また、同施設ならではの治療システムとしては、陽子線治療では世界初の「積層原体照射システム」や「CT自動位置決めシステム」がある。「積層原体照射システム」は、がんの病巣の形状に合わせて陽子線を高い精度で照射できるシステム。加えて「CT自動位置決めシステム」を導入したことで、従来のX線による照射では難しかった病巣や、〝周辺組織の日々の変化〟を把握して位置決めすることが可能になった。

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(出所:厚生労働省ホームページより「がん医療」関連に限定して転載)

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